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ラムサール3

カスピ海のほとりにて

【写真】 カスピ海のほとりにて


ラムサールの街を散策していて、この地がイランであることを忘れそうになったことが幾度となくありました。山には青々とした木々が生い茂り、セミたちの鳴き声が木々から聞こえ、清浄な小川には元気に川面を泳ぐカエルが生息しており、それらの風景や光景を眺めていると、まるで日本にいるかのような感覚にとらわれました。イランにありがちな荒涼とした大地や人為的に水を与えられてかろうじて命を保っている草木の姿は、ここでは全く見掛けることはありませんでした。その為、つい日本にいる感覚になり、街のあちらこちらに掲げられてあるペルシア語の看板を目にして、それがごく当たり前の光景であるのに何とも言えない違和感を感じたりしました。どこか懐かしさを感じる光景、思わず郷愁を感じてしまう風景が、ラムサールの街のそこかしこにありました。

道路脇に設けられている小さなバスターミナルに降り立つと、一人の男性が私に近寄り、声を掛けてきました。「これからどこへ行くの?ホテルの予約はしているの?」と。男性が言うには、ラムサールに安宿はあまりなく、安宿はここから少し離れた場所にあるとのこと。そして、安宿まで私を案内することを提案してきました。特に断る理由もなく、一緒にタクシーに乗り込み、走ること10分。私たちは浜辺にある閑静な住宅街に到着しました。

とある民家の前に着くと、男性はタクシーの運転手に停車するよう命じ、「ここがあなたが探している安宿です」と私に告げて、降車するように促してきました。ここでようやく気付いたのですが、男性は単なる親切心で私をここまで運んで来た訳ではなく、しかも一般の民家に私を宿泊させようとしていたのです。この地方では、観光客に自宅の空き部屋を提供して小遣い稼ぎしようとする人と、観光客に声を掛けて民家に誘導する客引きとが、お互い持ちつ持たれつの関係で共存していたのです。そして交渉が成立すれば、客引きは観光客が支払った金額の何割かの金銭を民家の持ち主から受け取るシステムだったのです。

交渉の結果、一部屋5万リアル(当時のレート換算で600円)で借りることになりました。その日の夕方、民家から歩いて数分の距離にあるカスピ海の海水浴場を散策していたときも、同様の客引きの男性から声を掛けられました。海から近く、そしてキッチン、トイレ、シャワー、テレビ付きの清潔な部屋が5万リアルで借りられるなら、悪くはない話であると思います。オフシーズンもこのシステムを利用できるかどうかはわかりませんが。

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